技術提案事例

放電加工からマシニングセンタに変更し、高硬度な金型も高精度に加工

お客様の課題:高硬度(高耐久)金型を作りたいが、放電加工では作れない

製品の耐久性向上のため、高硬度の材料で金型を製作する必要がありました。

しかし、従来工法である放電加工は、加工面に微細なクラック(ひび)が入りやすい「加工変質層」を形成するため、金型の寿命を縮める原因となる可能性がありました。そのため、お客様は放電加工を用いずに、高硬度材を精密に加工できる技術を求めていました。

技術的背景:高硬度材加工における放電加工と切削加工

HRC60を超えるような高硬度鋼材は、一般的な切削工具では刃が立たないため、従来は放電加工が主流でした。

放電加工は、電極とワークの間で放電を発生させ、その熱で金属を溶かして加工する方法ですが、加工表面が急熱・急冷されるため、硬くてもろい「白層」と呼ばれる変質層が形成されます。この層にはマイクロクラックが含まれており、金型使用時の応力集中点となり、早期の破損やチッピング(微小な欠け)の原因となることがあります。

一方、近年の工具技術と加工技術の進化により、高精度なマシニングセンタと超硬工具、そして最適な加工プログラムを組み合わせることで、高硬度材を直接切削することが可能になっています。

扶桑精工の提案:高精度マシニングセンタによる直彫り加工

扶桑精工は、この課題に対し、最新鋭の高精度マシニングセンタを用いた「直彫り加工(ダイレクト切削)」を提案しました。

この方法では、放電加工を一切行わず、高硬度材を直接削り出すため、加工変質層が形成されません。これにより、材料本来の靭性(ねばり強さ)を損なうことなく、耐クラック性に優れた金型を製作できます。また、扶桑精工の加工技術は、高硬度材でありながら微細な形状の加工も可能であり、加工後の磨き工程を最小限に抑える「磨きレス」に近い高品位な加工面を実現します。これにより、寸法精度が極めて高く、長寿命な金型を提供することが可能です。

マシニングセンタによるダイレクト切削を採用したことで、ひび割れのリスクがなく、耐久性に優れた高硬度金型が製作できました。特に、高い寸法精度と耐久性が求められるペットボトルのプリフォーム金型やキャップ金型などにおいて、この技術は絶大な効果を発揮しています。

扶桑精工は、常に最新の加工技術を追求し、お客様の高度な要求に応える最適なソリューションを提供します。